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 前回の本ブログ記事(「再生医療等安全性確保法の改正案」)で取り上げた「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法、安確法)の改正法(令和6年法律第51号。以下「改正安確法」)が、本日、参議院本会議で可決、成立しました
改正再生医療法が成立 体内での遺伝子改変対象に」(2024年6月7日・共同通信配信)
再生医療の審査、公正さ疑われるなら国が立ち入り検査へ 改正法成立」(上記同日・朝日新聞デジタル)

 改正安確法の施行については、公布の日から施行するとされている一部の規定(特定核酸等の製造施設の許可申請等)を除き、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」とされているので(同法附則1条)、令和7年(2025年)6月半ば頃と予想される施行期日(本ブログ記事公開後の令和6年6月14日、改正安確法が公布されたことに伴い、令和7年6月14日までの間のいずれかの日)までには、必要な政令(再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令)改正や省令(同法施行規則)改正が行われるものと思われます。前者(施行令)については、安確法による規制対象となる再生医療等技術の範囲について、in vivo遺伝子治療やゲノム編集技術を臨床応用する技術が新たに定められるものと見込まれ、後者(施行規則)としては、特定認定再生医療等委員会の委員の構成要件に関する改正が行われる可能性があります。

 なお、前回ブログ記事で紹介した認定再生医療等委員会の審査等業務のガイダンス素案については、改正安確法の成立に先立ち、正式なガイダンスとして公表されました。
認定再生医療等委員会の適切な審査等業務実施のためのガイダンス(手引き)」について(令和6年5月13日医政研発0513第1号)

 また改正安確法、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(以下「安確法等改正法」)では、「政府は、この法律の施行後2年を目途として、細胞の分泌物、人の精子と未受精の卵細胞との受精により生ずる胚〔はい〕に加工を施したものその他の物を用いる先端的な医療技術に係る研究開発、当該医療技術を用いた医療の提供及び諸外国における当該医療技術に係る規制の状況等を勘案し」、改正安確法「その他の法律の適用の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。」としています(同法附則2条1項)。
 前回ブログ記事
で言及したエクソソーム等の細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)を含む細胞由来の物質(細胞外小胞が単離されていない幹細胞培養上清、サイトカイン等も含まれるものと思われます。)を「細胞の分泌物」として概念定義し、ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等とともにこれらを用いる医療技術について、今回の改正安確法安確法等改正法施行後2年という比較的短期間を目途として必要な法制上の措置等を講ずるものと明確に示したことが注目されます。
 細胞外小胞等については、これも改正安確法安確法等改正法の成立に先立ち、日本再生医療学会から「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」が公表されています。
 今後進むと思われる「細胞の分泌物」に関する法制上の措置等の整備に当たっては、このガイダンスの内容、及びこれに基づく細胞外小胞等の調製(製造)管理・品質管理、臨床応用に当たっての効果検証やリスク・プロファイリング等の運用状況が一定程度考慮されることが予想されます。

 再生医療等安全性確保法も、(再生医療等製品について定めた医薬品医療機器等法の関連規定とともに)今秋には施行後10年という節目を迎えることになります。この間、我が国における再生医療の実用化・社会実装は、法制定時の理想どおりに進んだ部分もあれば思うように進まなかった部分もあり、また認定再生医療等委員会の審査の質向上が問われる契機となった委員会ショッピングの問題など、再生医療分野の臨床研究/自由診療をあえて規制対象とした特別法の制定と運用により、それまで可視化されてこなかった自由診療や倫理審査の問題点が可視化されるようになった効果があったものと、個人的には認識しています。
 今後も、再生医療法務を取り扱う専門家の1人として、我が国再生医療の臨床応用において必要とされる適正なガバナンスの確保のため、尽力していきたいと思います。

<※令和6年6月15日、青字部分を加筆修正しました。>
<※令和6年10月30日、緑字部分を加筆修正しました。>