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 11月26日に開催された日本医事法学会研究大会(神戸大学六甲台キャンパス第二学舎)における掲題ワークショップ(企画責任者:一家綱邦・国立がん研究センター研究支援センター生命倫理部部長)に、一家先生、佐藤雄一郎先生(東京学芸大学准教授)とともに共同報告者として登壇しました。
 ブログ筆者からは「再生医療と自由診療の在り方に関する考察」と題して、主に次のテーマについて報告しました。

(1) 認定再生医療等委員会の設置・運営管理・審査等業務の現状
(2) 再生医療等(特に自由診療として行われる治療)の提供ルートに関与する外部事業者・外部専門家の自己規律、及び利益相反管理・責務相反管理の必要性
(3) 再生医療等安全性確保法の見直し議論の紹介とその問題点(自由診療としてのエクソソーム療法を当面規制対象外にしようとする方向性への疑問など)
(4) 自由診療としての再生医療等の適切な提供の在り方
 
 ブログ筆者の私案として、治療(自由診療)として提供される再生医療等について、科学的妥当性(有効性)の評価に応じた民間保険(再生医療等治療賠償補償制度、訪日外国人患者向け旅行保険など)の保険利用制限にリンクさせるシステムを考えています。医療水準に到達していない科学的に未確立な再生医療等について保険利用が制限される民間保険の商品設計が採用されるようになれば、そのような未確立医療が自由診療として野放図に実施されるのを牽制し、将来的には健全な形で淘汰されていく効果が期待されます。再生医療等データ提供システム(日本再生医療学会)の役割の一つとして、将来的にはそのような保険利用制限に結び付く臨床評価の手段に同システムで構築されたデータベースを活用することを考えてもよいかもしれません。本報告の最後にそのような視点も提示させていただきました。

 また本報告では、弁護士、行政書士などの士業者が、再生医療等の提供や認定再生医療等委員会の審査運営に関与する場合における利益相反・責務相反対策についても報告しました。自由診療分野を中心とする再生医療法務は、士業者にとって近年有力な職域拡大ツールの一つですが、ワンストップサービスの過度な展開については、専門職の職業倫理という観点から適切な自己規律が求められます。例えば、同じ再生医療等提供計画について、作成・厚生労働大臣(地方厚生局)への届出と認定再生医療等委員会の審査等業務を1人の士業者が兼務する、又はこれらの業務を共同事務所・提携関係にある士業者同士でシェアしたり融通し合ったりするといった手法は、審査を求める側と審査する側の利害・責務が相反する典型例であり、度が過ぎれば利益相反として懲戒などの問題を引き起こしかねないことに留意する必要があります。

 本報告を含む第52回研究大会の詳細は、次年度の年報医事法学(例年8月下旬〜9月上旬発行)に掲載されるものと予想されますので、御興味のある方は同誌の発行までお待ちいただきたく存じます。
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 コロナ禍以降久しく絶えていた日本医事法学会のリアル学会に参加し、他のプログラムについても参加者の先生方と大変活発で有意義な議論を交わしました。

※11月29日に一部修正・加筆しました。