弁護士・弁理士 大西達夫のブログ

知的財産法・行政法・医事法の分野を中心に、話題となっている法改正や裁判等のニュース解説、ビジネスや日常生活と法律との関わりなどを説明していきます。

 久々の行政法関係の記事ですが,ふるさと納税訴訟最高裁判決(最高裁令和2年(行ヒ)第68号不指定取消請求事件・同令和2年6月30日第三小法廷判決)に関する判例解説を事務所ウェブサイトに掲載しました。
 ふるさと納税地方団体の指定制度の導入に当たり,同指定制度導入前にふるさと納税制度の趣旨に反する方法により他の地方団体に多大な影響を及ぼす寄附金募集を行い,他の地方団体より著しく多額の寄附金を受領した団体でないことを募集適正実施基準として定めた総務大臣告示(平成31年総務省告示第179号)は,委任規定である地方税法37条の2第2項等の委任の範囲を逸脱した違法な委任命令として無効であると判断され,泉佐野市をふるさと納税地方団体として指定しないとした総務大臣の不指定処分が適法であるとした原判決が破棄され,同不指定処分が取り消されました。
 委任命令の適法性を判断するに当たり,法律による授権の趣旨等を考慮して授権規定の明確性を要求する近時の最高裁判例の判断枠組み(最二小判平25.1.11民集67-1-1・医薬品のインターネット販売等を一律に禁止する旧薬事法施行規則を法律の委任の範囲を逸脱した違法な委任命令として無効と判断した判例)に則った判断といえます。
 委任命令の立案の職務を遂行する行政庁担当者の基本的姿勢としては,行政裁量論に過度に依存することも,反対に形式的法治主義にいたずらに拘泥することもなく,事後的な司法判断により当該委任命令が委任の範囲を逸脱した違法無効なものとされるリスクを合理的に予測し,可能な限りこれを予防することが求められます。そのためには,法律による委任規定の趣旨,立法過程の議論,委任命令により制限される権利利益の性質等を十分に考慮し,授権法制定当時の立法者(授権者)の意思を精査する姿勢こそ重要であることが,本判決でより一層明確になったといえるでしょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としての再生医療等安全性確保法施行規則,臨床研究法施行規則等の省令改正が行われ,(1)認定再生医療等委員会における審査等業務の書面審査の拡大,(2)説明同意文書のe-文書化といった措置がとられました((1)は本年4月30日,(2)は本年5月15日に公布日即施行)。省令改正の解説記事を事務所ウェブサイトに掲載しました。
新型コロナウイルス感染症の治療に幹細胞治療その他再生医療の知見を活用しようとする取り組みも始まっていますが,やはり再生医療等安全性確保法その他の関係法令の趣旨に立ち返って,(有効性を含む)科学的妥当性及び安全性が確保された科学的根拠に基づく医療(EBM)としての再生医療の研究開発と臨床実践の普及が望まれるところです。

というタイトルの拙稿を、医療従事者向け会員制サイトのm3.comの法律記事連載シリーズ「弁護士が解説!『医療×法律』の基礎」に掲載していただきました。
https://www.m3.com/news/iryoishin/700628
サブタイトル「過度の心配は不要だが、有害事象の発生等には適切な対応を」で端的にメッセージを込めたつもりですが、様々な立場から倫理審査委員会を構成する委員の皆様が、委員会で本来時間を使って検討すべきプロトコル(治験計画、研究計画、再生医療等提供計画等)の中身の議論以外の心配事で煩わされないように、との問題意識から論じています。

とのタイトルの拙稿が年報医事法学第34号に掲載されました。昨年(平成30年)11月の第48回医事法学会研究大会での個別報告を基にした論稿となります。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8105.html
インバウンド時代を迎え医療の国際化が求められる中で、本稿では特に外国人患者/受診者と国内医療機関との間を取り持つ医療コンシェルジュ/医療コーディネーター等の中間事業者の実態を把握した上での適切な規制の在り方を検討する必要性を述べています。併せて、つい先頃報道で社会の関心を集め、健康保険法の改正にもつながった外国人による健康保険の不適切利用の問題を取り上げ、中間事業者を通じた情報収集による実態把握の重要性に言及しています。

 当職が委員を務めた「平成30年度 ヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給実現に向けた検討委員会」の成果報告書がAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のウェブサイトで公開されました。
https://www.amed.go.jp/content/000047251.pdf

 上記委員会は、AMEDの公募事業である再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(国内医療機関からのヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給モデル事業)(以下、モデル事業)に併走し、ヒト細胞原料供給に係る法的・倫理的・社会的な課題を中心に議論する委員会として設置されました。
 平成30年度は、細胞供給に関する次の3つの議題について委員会で討議し、その内容を報告書としてまとめました。

<検討課題1>
IC文書
<検討課題2>
情報管理・トレーサビリティー
<検討課題3>
事業者の責任範囲・契約のあり方

 特に平成30年度は、検討課題1に関連して、商用利用可能なヒト(同種)体性幹細胞の取得に使用するIC文書、取り分け再生医療の産業化発展という目的に合った文書内容について議論し、IC説明文書及び同意文書の参考例を作成しました。
https://www.amed.go.jp/content/000047252.pdf

 令和の時代を迎え、商用可能なヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給の実現は、再生・細胞医療の発展にとって不可欠かつ喫緊の課題となっています。モデル事業に関する成果報告書の公開を受け、再生医療分野に携わる法律専門家の一人として、我が国の再生医療の環境整備に今後も微力ながら力を尽くしていく決意を新たにしました。

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